2017年11月07日

川越散歩1

和刻本正史『南斉書』を訪ねて

和刻本正史『南斉書』の出版は、川越藩主の柳沢吉保(1659–1714)が計画しました。これは中国・明代に南京国子監で出版された二十一史のうちの『南斉書』を覆刻したもので、江戸長谷川町にあった松會堂松會三四郎によって出版されたということです。『南斉書』のほかには、最初に出版した『晋書』のほか、『宋書』、『梁書』、『陳書』が出版されています。

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写真の『和刻本正史南斉書』は汲古書院によって、昭和45年に影印(縮刷)出版されたものです。

城下町川越。
1590年(天正18年)、徳川家康が一族家臣を従えて関東に移ったとき、川越には酒井重忠が封じられました。川越藩は、江戸時代には17万石を誇っていました。江戸時代の本丸御殿は、建物の数16棟、1025坪の規模を誇るものでした。

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現存する本丸御殿は、1848年(嘉永元年)に建てられたものです。明治以降、建物の移築・解体が行われ、玄関部分と大広間だけは役所、工場、校舎などに使用されました。現在では、本丸御殿の玄関部分と大広間、移築された家老詰所を残すのみとなっています。それでも、このような本丸御殿は東日本には唯一しかなく、全国的に見ても貴重な遺構だそうです。
柳沢吉保が川越藩主となり川越城を拝領したのは、元禄7年(1694年)1月7日のことです。宝永元年(1704年)12月21日、甲斐国甲府城と駿河国内に所領を与えられ国替えとなるまでの10年間、川越城主だったのです。

川越市立博物館へ。
第28回企画展「柳沢吉保と風雅の世界」は、2006年10月7日から11月12日まで開催されました。この展示を見ることができなかったのですが、展示図録を入手することができました。

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それによると、4テーマで展示されたとのこと。
一、五代将軍綱吉と吉保
二、六義園にみる風雅の世界
三、吉保をめぐる風雅の人々
四、吉保と川越藩政
このうち「三 吉保をめぐる風雅の人々」のところに『晋書』の図版がありました。現物を見たかったなあ。


『活版印刷三日月堂』を訪ねて

ほしおさなえさんの川越を舞台にした小説『活版印刷三日月堂』シリーズ(ポプラ文庫)の舞台となった場所を訪れました。川越の小さな活版印刷所の若き店主・弓子さんとお客さんとの交流の物語です。2017年末に発売される第3作も楽しみ。四部作になるのだそうです。

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小説の中の「活版印刷三日月堂」は、「川越のメインストリートから仲町の交差点を左に入って鴉山(からすやま)神社のはす向かいの白い建物」という設定。物語の雰囲気を味わってみようと思いました。川越にはよく行くのですが、鴉山神社の周辺には初めて訪れました。住宅街の中に小さな鳥居がありました。
室町時代から続く由緒ある神社で、歴代の川越の藩主たちの庇護を受けてきたのだそうです。

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[追記]
もう一度小説を読み直したところ、「三日月堂」の位置は鴉山神社のこちら側ではなく、反対側だということがわかりました。

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物語では、鴉山神社のはす向かいの白い建物とのことです。駐車場になっているあたりではないかと思われます。

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川越で「有限会社川田写植」をみつけた!

木版印刷、活版印刷ときて、さすがに写真植字はないだろうと思っていたのですが、なんと西川越駅近くで「有限会社川田写植」の看板をみつけました。

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ちょうど日曜日で休みでしたが、あとで調べるとちゃんとウェブサイトもありました。
「有限会社川田写植」公式サイト
さすがに写植印字はやっていないようですが、社名に「写植」を残したまま営業されています。とてもうれしく感じました。ぜひこのままで継続していただきたいものだと願っています。



(おまけ)「小江戸蔵里」の「展示処」。いつかここで何かイベントができればと思いつつ……。

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posted by 今田欣一 at 07:56| 漫遊◇埼玉の翼 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月23日

川越散歩2

櫻井印刷所

2月5日午前11時頃、「ほしおさなえ先生トークショー&サイン会」のチケットを受け取るために櫻井印刷所を訪ねました。川越・札の辻の近くにある大正13年創業の印刷会社です。

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このとき私は、場所が近いということで、「活版印刷三日月堂」の弓子さんのモデルは櫻井印刷所社長の櫻井理恵さんではないかと思いました。実際、「三日月堂ってここですか?」と櫻井印刷所を訪れる方が何人かいたそうです。

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チケットの番号は005番でした。


川越市立美術館

2月16日午後16時少し前、川越市立美術館へ。

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開館15周年記念特別展「生誕130年 小村雪岱―「雪岱調」のできるまで―」を、閉館の17時まで粘って見学。

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川越スカラ座

コーヒー・ブレイクの後、午後18時過ぎに川越スカラ座に到着。

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明治38年に寄席「一力亭」から始まり、川越松竹館を経て川越スカラ座へと引き継がれ、現在も街の映画館としてたくさんの映画好きが訪れているそうです。平成13年に閉館の危機がありましたが、NPO法人の運営となって復活しました。「活版印刷三日月堂」でもモデルとなっています。

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当日いただいたノベルティは、活字版印刷によるコースター。柿本人麻呂の和歌ですが、「活版印刷三日月堂」の「月」、櫻井印刷所のかつての屋号、文星舎の「星」、川越スカラ座の舟橋一浩支配人の「舟」が入っています。
そして、櫻井印刷所の発行するフリーペーパー「kawagoe premium」の最新号。川越の街を紹介する内容で、日本タウン誌・フリーペーパー大賞の地方創生部門優秀賞を受賞されたそうです。


ほしおさなえさんのトークショー、というか櫻井印刷所の社長であり「kawagoe premium」編集長の櫻井理恵さんと川越スカラ座の舟橋一浩さんとの鼎談、すごくよかった! 
ほしおさなえさんの『活版印刷三日月堂』第4巻、新しい小説『菓子屋横丁月光荘』(角川春樹事務所)、櫻井印刷所の「kawagoe premium」第7号、そして川越スカラ座の上映作品が楽しみです。そして、「學のまちkawagoe」の今後の活動も期待します。
posted by 今田欣一 at 21:40| 漫遊◇埼玉の翼 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月26日

川越に活版印刷が戻ってきた!

川越の櫻井印刷所が約30年ぶりに活版印刷工場を復活。2019年1月26日、そのお披露目会に招待していただきました。

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櫻井印刷所の櫻井理恵社長のご挨拶。つづいて川合善明川越市長の祝辞。

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工場の外観は、ほしおさなえさんの小説に出てくる「三日月堂」を思わせる懐かしさあふれる佇まいです。工場前には川越市内の飲食店、雑貨店の出店も。

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活字。これでも往時の半分ぐらいだとか。

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岩田母型の常用漢字表。

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メディアのインタビューに応じる櫻井社長。

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印刷機。これから名刺やハガキの受注をはじめるそうです。

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むかしの張り紙もそのまま残されていました。

posted by 今田欣一 at 21:21| 漫遊◇埼玉の翼 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月29日

川越散歩3

蓮馨寺

雨が降りそうで降らない曇り空の中、蓮馨寺へ。

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蓮馨寺講堂で開催される、學のまちkawagoe実行委員会主催の講演会「文学から読み解く川越」を聴講しました。

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シリーズ第一回は「三芳野の雁−伊勢物語の川越−」と題して、元TBSラジオキャスターの朝久麻美さんの朗読を交えて成城大学教授の上野英二先生に解説していただきました。

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伊勢物語といえば、和字書体「さがの」は、木活字で組まれた嵯峨本『伊勢物語』の影印本『伊勢物語 慶長十三年刊 嵯峨本第一種』(片桐洋一編、和泉書院、1981年)を原資料として制作したのでした。

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水上製本所

小江戸蔵里の向かいにある「水上製本所」。製本会社のアンテナショップだそうです。

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古民家を改修した店内には、手漉き和紙の朱印帳やスタンプ帳などが並んでいます。製本技術を用いたものであれば、手帳・ノート・アルバムなど何でも作製可能とのこと。

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売れ筋ナンバーワンだという布製の文庫本カバーを購入。さっそく「欣喜堂書体見本帖」「欣喜堂組み見本帖」「欣喜堂活字入門帖」につけてみました。いい感じです。

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和紙の山田

クレアモールにある和紙専門店「和紙の山田」を覗いてみました。全国の産地の和紙をはじめ、さまざまな種類の和紙を取り揃えているとのことです。

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posted by 今田欣一 at 22:34| 漫遊◇埼玉の翼 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする