場所: 東京・表参道 東京アナログラボ
内容: 初号活字をつくろう! 「貘1973」制作プロジェクト
樹脂活字4文字を持って、今回おじゃましたのは東京・表参道にある東京アナログラボ。橘美貴子さんの工房だ。参加したのはtypeKIDSのメンバー6人。今回は少なめだ。アップル・ストアから歩いてすぐのところにある。
◎組版、そして印刷
まず、サンプル4文字(季節外れの「謹賀新年」)の樹脂活字だけで組版することにした。橘さんの手で、さっさっと組まれていく。手慣れたものだ。
東京アナログラボ所有の真新しい Adana21Jにセットして印刷してみる。Adana21Jは朗文堂 アダナ・プレス倶楽部製の卓上活版印刷機である。
◎にわか職人、つぎつぎに登場
予想通り、表面が平滑でないため、きれいに印刷できない(写真下)。ここでにわか職人の登場だ。表面をサンド・ペーパーで削り、なめらかにしようと考えたのだ。240番のサンド・ペーパーを敷いて、その上から樹脂活字を慎重に滑らせて、表面を削り取っていく。見た目ではっきりとわかるぐらいに平滑になった。
印刷を繰り返しながら、さらにサンド・ペーパーをかけて調整していった。なんとかきれいに刷れるようになったが、文字がかすれてしまう部分が出てきた(写真上)。とくに「賀」の下方部分が出ない。ここでテープ職人登場。テープで微妙に高さを調整していくことになった。 何度繰り返しても、「賀」の下方は出てこない。それどころか他の部分もかすれてくるようになってしまった。何度か試行錯誤を繰り返したがうまくいかない。
そこへプレス職人が出てきた。印刷のときの微妙な力加減で、濃度が均一にできることがわかった。そのコツをメンバーに伝え、なんとかうまく印刷できるようになった。
アウトラインがガタガタなのは、パーソナル3Dプリンターの精度によるものなので、印刷工程でカバーすることは無理である。この点については、パーソナル3Dプリンターの機種などを再検討することにして、活版印刷としてはまずまずの状態になった。
◎年賀状を印刷してみよう
なんとか印刷できるようになったので、既成の欧字書体で「typeKIDS 2015」という文字を入れることにした。
まず「謹賀新年」の位置を調節して印刷し、つづいて「typeKIDS 2015」を印刷した。「謹賀新年」の版にテープによる微妙な調整が施されているので、そのまま生かしたいことと、既成の欧字書体とは高さがほんの少し違っていることが考えられるために、版をわけて印刷することにした。
ひとり数枚ずつ印刷し、2015年の年賀状(?)が完成した。最終的には、思ったよりうまくできてほっとしている。
◎いよいよ……
来月から、再び「貘ボールド」の原字制作をすすめていく。まずは「ひらがな」と「カタカナ」からまとめていきたい。楽しみはこれからだ。
参考:
6月下旬に、typeKIDS メンバーの山田さんが、台湾の活字鋳造会社、日星鋳字行を見学してきた。
●(中)台湾活版印刷文化保存協会の柯志杰さん、(右)日星鋳字行の張介冠代表。
●1階と地下に分けて活字がびっしりだそうだ。
●活字組版と印刷物。