2013年11月03日

初号活字をつくろう! October 2013

日時: 2013年10月27日(日) 17時30分−19時30分
場所: 新宿区榎町地域センター 小会議室
内容: 初号活字をつくろう! 「貘1973」制作プロジェクト

1973年に私が描いたレタリング。40年の時を経て、これを発展させた活字書体「貘1973」を初号活字として製作してみようというプロジェクトを、勉強会「typeKIDS」ではじめることになった。
 当時は4cm角サイズで描いていた鉛筆による下書きを、活字の原図サイズにあわせて2inch(5.08cm)角に拡大した。これをベースに、デザイン的な仕様を決めて、とりあえずは活字の原図を制作していくことになった。

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●「貘1973」下書き 漢字書体

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●「貘1973」下書き 和字書体

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●「貘1973」下書き 欧字書体

 当初は、昔ながらの方法、つまり紙に墨で描いていこうかと思っていた。しかしながら「typeKIDS」のメンバーは、書体開発に関してはほとんど初心者だ。修整をくりかえしたり、テストをしたり……ということを考え合わせると、やはりAdobe Illustrator を使うほうがやりやすいようだ。「デジタルだけどアナログの心」的な?(笑)
 どのようにすすめていくかはまだ考えていない。見切り発車だ。企画、仕様から「typeKIDS」メンバーで決めていく。どうなることやら。だが、とても楽しみだ。
posted by 今田欣一 at 09:28| 事始◇ワークショップへようこそ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月11日

初号活字をつくろう! November 2013

日時: 2013年11月10日(日) 17時30分−19時30分
場所: 新宿区榎町地域センター 小会議室
内容: 初号活字をつくろう! 「貘1973」制作プロジェクト

まずは、専用の原字用紙をつくろう
 写真植字用の原字用紙(写研)は、基本的には48mmボディ・サイズだった。1mm方眼の薄いブルーのガイドラインを入れていた。これとは別に16分割(3mmきざみ)のラインを入れたフィルムを用意して、位置の確認用に使っていた。
 「貘1973」の原字用紙は2inchボディ・サイズで作成することにした。1/18inch(約1.41mm)方眼で薄いブルーのガイドラインを入れることにした。プリントしてのチェックに便利なようにA4サイズに12文字入るようにレイアウトすることにした。
 この用紙をプリントして、紙に鉛筆で下書きする。これをスキャンして下図にし、Adobe Illustratorをもちいてトレースする。できた原字をプリントして、チェックを繰り返しながら、メンバーみんなで完成させていくという方法である。

漢字の書体見本をつくろう
 最初に制作するのは、書体見本の12文字である。1973年に私が描いたレタリングをもとに、あらためて原字用紙に画いてもらうことになった。
 その際に、簡単な仕様(字面サイズの基準、ウエイトの基準)を決めておいた。
 字面サイズの基準
  標準字面はボディ枠から12pt、最大字面はボディ枠から2pt 
 ウエイトの基準
  横画 6pt、竪画 6pt

自分の名前を画こう
 この書体見本に合わせて、好きな漢字を画いてみることにした。
 とりあえずは自分の名前が組めるようにしたい。「田」とか「子」とかは重複してしまう。何も同じものを複数つくる必要はないので、誰か一人が担当するようにした。ほかに、自分の好きな熟語や漢詩が組めるように、重複することのないように調整しながら、名前も含めて12字を選んで下書きをしてみることになった。これが出発点で、すこしずつ増殖させていくやり方である。

[参考]活字製作の工程を学ぶ
 このあと、朗文堂 アダナ・プレス倶楽部の特別企画で、真映社・安形製作所・築地活字の協力のもとに、2008年秋に開催された「実践活字母型彫刻」体験のレポートをみることにした。この企画に参加していたメンバーから話を聞きたかったのだが、残念ながら欠席だったので、各自がスマートフォンをみながら感想を述べ合うという奇妙な勉強会となった。
 1 活字原図製作(体験)と活字パターン製造(依頼)
 2 ベントン型彫刻機による五号活字母型の彫刻(体験)
 3 活字鋳造を依頼(見学)
   
 もちろん、「貘1973」制作プロジェクトにおいて、実際にこのような工程で活字を作るということは、もはや実現不可能であるが、できるだけ活字製造の技術をふまえながら、じっくりと制作を続けていきたいと思ったのだった。
posted by 今田欣一 at 08:29| 事始◇ワークショップへようこそ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月18日

番外編 木活字を彫刻してみた

 鋳造活字も原字制作の技術としては写真植字と変わりのないものなので、それ以前の直接彫刻による木活字製作をやってみたくなった。
 2000年11月の橋本和夫氏『文字の巨人』インタビュー(字游工房ウェブサイト)で、つぎのようなことが述べられている。

 太佐先生から僕は、文字の画線をフリーハンドで描くことを教わりました。習いはじめは烏口や溝尺などは使わせてもらえなかったですね。明朝の『永』をフリーハンドで書くことを指示されました。この意味は、画線の力を入れるところや抜くところなどの動きを体得するためです。彫刻の活字は、彫刻刀を自由に動かして文字を彫るのですから、いわゆる生きた線の文字が生まれたのでしょう。手書きの線は、画線の動きを意識するためか、不思議に自然な線質になるものでした。このようにして線質を見分ける能力が開発されました。(後略)

(前略)書道では、漢字・仮名の形のユニークさを生かして、大きく書いたり、長く書いたりして文字の流れを構成して、一幅の作品を完成させます。ところが活字では、どのように組み合わせても文字を生かせるために、四角の制約があり、その中に文字をデザインするには書道とは別の感覚が必要なわけですね。それらの技術を習得していたのは、元々活字を彫刻していた人のほうですから、取り組みが容易だったということでしょう。


 彫刻の活字を実験してみた。
 まず、木駒になるものを探した。最初はサクラ材で試したが、初心者には堅すぎて歯が立たなかった。そこで少し柔らかめの材料で、サイズは初号より少し小さいが15mm角のものを買い求めた。しかし柔らかすぎるとエッジがきれいにならない。やはりサクラ材のような堅いもので実験することにした。
 彫刻刀は、とりあえずの実験用として、とりあえず木工用の1.5mmと3mmのものを用意した。DIY用の安価なものである。そのほかの道具は、篆刻用の印床、硯などを代用した。スタンドルーペはネイルアートなどのために売られていたものである。

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●彫刻の活字の用具

@ 字入れ
木駒の小口に直接、面相筆で裏字に描いていく。まず朱墨でだいたいの当たりをつけ、墨で描いていく。墨と朱墨で修整を繰り返しながら仕上げる。朱墨ではなくホワイトのほうがよいかもしれない。

A 彫刻
彫刻には木活字のほかに種字彫刻がある。木活字は、近年では金属活字がなかったときに足し駒としても製作されてきたようだ。この実験では、木活字を製作することにする。ちなみに木駒の種字彫刻は、金属活字の母型をつくる前工程なので、条件が厳しくなるし、現在では再現する技術が一般的ではない。それに種字彫刻は後処理が比較的容易な鉛合金の種字彫刻になっていった。地金彫師といわれている人である。

posted by 今田欣一 at 20:58| 事始◇ワークショップへようこそ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月23日

初号活字をつくろう! December 2013

日時: 2013年12月22日(日) 15時15分−17時15分
場所: 新宿区榎町地域センター 小会議室
内容: 初号活字をつくろう! 「貘1973」制作プロジェクト

やっぱり手画きでやろう
10月の段階では、「デジタルだけどアナログの心」的なことで、Adobe Illustrator を使ってすすめようかということになっていたが、「typeKIDS」のメンバーから「紙に墨で画くという昔ながらの方法でやろう」という意見が出た。
 最終的にはデジタル・タイプではなく、物体としての活字製作をめざしているのである。できるだけパソコンのソフトウェアを使わないで、手作業ですすめようということになった。本格的な鋳造活字は予算的に無理なので、できるだけそれに近いものを作って、実際に活字組版をしたいと考えている。詳細はまだ未定である。

専用の原字用紙について
原字用紙(兼下書き用紙)のデータをAdobe Illustratorで作成する(ここはパソコンを使う)。プリントして下書き用紙とし、鉛筆で下書きする。もう一枚を原字用紙として、下書きをアウトラインでトレースして、墨入れをする。できた原字を仕上げて、チェックを繰り返しながら、メンバーみんなで完成させていく、という方法になった。
 先月の打ち合わせでは、原字用紙(兼下書き用紙)は2inchボディ・サイズで、1/18inch(約1.41mm)方眼で薄いブルーのガイドラインを入れることにし、A4サイズに12文字入るようにレイアウトすることになっていた。これが、インチという不慣れな単位ということもあり、まだ完成していないとのこと。
 作業開始は来年に先送りということになった。

和字書体だって分担する
11月に漢字書体の分担を決めたが、肝心の原字用紙(兼下書き用紙)のデータがまだなので、実作業には入れない。そこで和字書体の分担を決めた。漢字書体より、和字書体をさきにすすめようということになった。
 和字書体はひとりで担当することが多い。そうでないと全体的なイメージが統一できない。それを承知の上で、「貘1973」は、ひらがな、カタカナをそれぞれ4名で分担することにした。このプロジェクトが「書体制作の体験」を主眼においていること、商品化することはないということで、あえてグループ制作に挑戦してみることになった。

参考:
今月は、日本タイプライター株式会社で「平成角ゴシック体」を制作されたAさんにお話をうかがうことができた。日本タイプライター株式会社は1917年(大正6年)創業以来、和文タイプライターを生産・販売してきた会社である。
「平成角ゴシック体」のアナログ原字は、おもにAさんとその上司にあたる方の2人で制作されたそうだ。上司にあたる方は大ベテランで、金属活字やタイプ活字の原字も制作されていたのだろう、「平成角ゴシック体」の制作工程は、金属活字のそれを踏襲しているようであった。
 原字サイズは、2インチの近似値である50mmボディだったそうだ。まず、トレーシング・ペーパーに下書きし、さらに別のトレーシング・ペーパーに清書する。その上に硫酸紙を重ね、レタリング・ゾルというインクで、雲形定規や烏口でアウトラインを描き、筆で塗り込む。修整はホワイトを用いず、削りとったそうである。
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posted by 今田欣一 at 12:18| 事始◇ワークショップへようこそ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月20日

初号活字をつくろう! January 2014

日時: 2014年1月19日(日) 15時15分−17時15分
場所: 新宿区榎町地域センター 小会議室
内容: 初号活字をつくろう! 「貘1973」制作プロジェクト

やっと下書きが始まった
できあがってきた原字用紙のデータを薄手の紙にプリントアウトした「下書き用紙」が配布された。やっと鉛筆での下書きができる準備が整った。下書き用紙は2inchボディ・サイズで、1/18inch(約1.41mm)方眼で薄いブルーのガイドラインが入れられている。
 このプロジェクトでは、40年前に私が描いた活字書体「貘1973」をベースにしようとしている。いわば、その復刻書体なのだ。4cm角サイズで描いていた下書きを、活字の原図サイズにあわせて2inch(5.08cm)角に拡大したものをトレースするということから始めることにした。

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トレースがむずかしい
当面はトレースすればいいだけなのだが、やってみるとなかなか難しい。最初の1字から悪戦苦闘となった(少しオーバーだが……)。直線がきれいな直線にならず、円弧がきれいな円弧にならない。いまはパソコンで簡単にできることが、いざ手書きとなると、なかなか思い通りにはいかなくて歯がゆいようだった。
 これは初心者だからということではない。最初から思い通りになるわけではなく、修整をくりかえしながら、カタチを整えていくわけである。そのための下書きなのだ。経験者はそれがわかっているから、もう少し大胆に描くことができるだけのことだ。

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全体像をつかむ
もうひとつの理由として、原資料があり、しかもひらがな、カタカナをそれぞれ4名で分担しているので、全体的なイメージが見えていないということが挙げられる。まだ、目先の1字、いや目先の1本の線だけしか見えていないようだ。
 あまり最初から自分の中での完成度に執着しすぎると、全体的な雰囲気とか大きさとか太さとかを調整するときに、気楽に直せなくなるかもしれない。いきなり下書きをはじめたが、この書体がどういう書体であるかということをもう一度確認して、メンバー全員が共有しておく必要があった。来月、再確認しよう。

創作的なことではなく、職人的な体験をするというのが趣旨である。いろいろ試行錯誤しながら、すすめていくことにしよう。
 で、この日の時間内には最初の1字もできなかった。「まあ、きょうは練習ということで……」と言っては見たものの、どうなることやら。


参考:
すべてアナログで制作するということになったので、原字制作の道具を揃える必要が出てきた。とりあえず、昔使っていた道具について説明したが、専門的にやるわけではないので、所持していないものは何かで代用できないか検討した。

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 活字書体制作にはライトテーブルが必要なのだが、買ってもらうほどではない。100均で売っている乾電池式のLEDプッシュライトが使えないかと思いついた。100均で売っているポリプロビレン製の収納箱に、このLEDプッシュライトを入れてみたところ、それなりの強度があり、トレースするには十分な明るさもあった。乾電池を含めても315円の簡易ライトテーブルである。

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posted by 今田欣一 at 11:51| 事始◇ワークショップへようこそ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする