はつひやまとM
わかばやまとM
みのりやまとM
フォントワークス・インターナショナルのコンサルタントの方が、東池袋の事務所に訪れてくれたのは1997年だったと思う。当時はフォントワークス・インターナショナルで企画・制作し、フォントワークスジャパン(現在のフォントワークス株式会社)で販売するということだった。
完成している書体があれば、「フォントワークス」からリリースしないかということだった。その頃、「FONTWORKS CLASSIC」というカテゴリーの「マティス」や「ロダン」といった書体と組み合わせて使用する「FONTWORKS KANA」というカテゴリーが設定されており、佐藤豊氏が「えれがんと」「ハッピー」「墨東」などの書体をリリースされていた。和字書体なら提供することは可能ではないかと思った。
思いついたのが、1991年に『いろいろいろは』という冊子のために試作していた和字書体である。ひらがな48字を重複することなく全部つかいながら全文がひとつの文脈になっている「いろは歌」だが、近藤春男さんは、その別バージョンを数多く作られている。これを私は「いろいろいろは」と呼んで、それを新しい和字書体を作って冊子にまとめたのだった。
その書体は、『人と筆跡−明治・大正・昭和−』(サントリー美術館、1987年)の図版などを参考にして制作したもので、このオリジナル・バージョンは、のちに「ほしくずやコレクション」で「たうち」、「さなえ」、「いなほ」として販売している。
これをベースにして、「マティス」に合わせてリデザインしたのが「はつひやまと」「わかばやまと」「みのりやまと」である。そのために字面を大きくし、ファミリー(M、DB、B、EB)を制作した。とくに「「マティスEB」ともなると極太になるので、書写を生かしたオリジナル・バージョンとは全く異なるイメージの書体になった。3書体ともにEBのほうが広く使用されているようである。
制作が終わり、1999年8月にフォントワークス・インターナショナルとライセンス契約を取り交わした。2001年2月にフォントワークスジャパンに引き継がれたのち、2003年10月にライセンス契約を合意解除し、フォントワークスジャパンに著作財産権を譲渡した。