新聞記事なので「社員しか知り得ないこと」という指摘には当たらない(むしろ社員は知らなかったことです……)わけです。また、終生の忠誠を誓っておられる人からすれば、この記事で証言している方々に対しては「モラルに欠ける」と思われているに違いありません。
私といたしましては、本蘭ゴシック・ファミリーをはじめ、日の目を見なかったナールBや、本蘭アンチック・ファミリー、紅蘭宋朝に関連して、当時の状況を語る手掛かりになることなのです。裏切られたという意味では、被害者のひとりであります。たとえ社史には残らない負の歴史であっても、客観的な事実として、蓋をすることなく、語り継ぎたいと考えております。
退社の後のことは、伝聞もしくは推察になります。
2000年の本蘭ゴシック・ファミリーの発売を最後に、新しい書体は作られなくなりました。そして希望退職が勧められ、書体制作部門は壊滅状態になります。一時、オープンタイプ化という話題がありましたが、この時すでに社内で制作することは事実上不可能になっていたのです。