2023年06月23日

[余聞3]宋朝体は明朝体の祖先だから……(花胡蝶に寄せて)

「松本第一期 文字塾展」が、2023年6月4日から10日まで松本市のマツモトアートセンターで開催され、大盛況だったそうです。その展示作品を収録した冊子を送っていただきました。
注目したのは、第一期の塾生の中で、宋朝体と組み合わせるための和字書体に取り組んだ人が2名もいたことです。前例のひとつとして「花胡蝶」も当然、チェックされていたでしょう。そして終了後の懇親会でも、その話題があったようです。私としては「花胡蝶」がどのように語られ、評価されていたのでしょうか。

HOI-3-5.jpg

明朝体も宋朝体も、もともと漢字のみで組まれていました。わが国では、明朝体は本文用として広く使われるようになったので、それに伴い、組み合わせる和字書体も発展していきました。現在では前例がたくさんあり、新しい書体にしても、それらを参考にして制作することができます。ところが宋朝体には前例があまりないのです。
木版印刷からの漢字書体の歴史を考えた時、宋代の刊本字様(宋朝体)が合理化されることにより、明代の刊本字様(明朝体)が生まれたことはすでに知られていることです。組み合わせる和字書体を考える時に、すでに明朝体と組み合わせる和字書体は完成されていることから、そこから歴史を遡ることで、宋朝体にふさわしい和字書体になるのではないかと考えたのです。
「花胡蝶」の和字書体を設計するにあたり、私が参考にしたのは、金属活字の「晃文堂明朝体五号」です。たまたまある雑誌に清刷りの複写物が掲載されていて、リョービ書体の源流ということもあり、これを参考にしようと思いました。漢字とは逆に、時代を巻き戻すように、具体的には、漢字の宋朝体の筆法・結法を和字書体に取り入れながらまとめていきました。
こうすることによって、あまり特徴はないかもしれませんが、宋朝体「花胡蝶」にしっかりと調和した和字書体が出来上がったのではないかと思っております。
posted by 今田欣一 at 14:36| 活字書体打ち明け話・3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする