このとき「今田欣一デザイン室」という屋号を使いはじめ、このまま「有限会社今田欣一デザイン室」として登記しました。また、書体名で「欣喜」を使ったことから、のちにブランド名として「欣喜堂」という名称を使うようになりました。
「KINKI TYPEFACE LIBRARY」には次の9書体について、種田山頭火の「この道しかない春の雪ふる」という俳句を組んで(ただ並べているだけですが)掲載しています。
[ベーシック・タイプ]欣喜明朝/欣喜ゴシック/欣喜ラウンド
[カリグラフィ・タイプ]欣喜楷書/欣喜隷書/欣喜行書
[ディスプレイ・タイプ]欣喜江戸文字/欣喜図案文字/欣喜現代文字
当時は[ディスプレイ・タイプ]の要望が強く、採用されたのは「欣喜図案文字」、のちの「イマリス」だけです。「イマリス」は株式会社ニィスと契約して制作しましたが、現在は販売されていないようです。
「欣喜江戸文字」も不採用でしたが、のちに『タイプフェイスデザイン漫遊』(2000年)という本のためにウエイトを変更した書体を試作しました。「鶴舞」という書体名で、フォントデータが残っていました。フォントデータが残っていたのは「鶴舞」だけです。
[ベーシック・タイプ]のうち、「欣喜明朝」と「欣喜ゴシック」はあるフォントメーカーで検討していただきましたが、結局不採用でした。やはりフォントメーカーでは、外部の者がこのような基本的な書体を担当するというのは無理だったようです。「欣喜明朝」は「ときわぎ白澤明朝」、「欣喜ゴシック」は「ときわぎ白澤呉竹」として継承していますが、今後、制作する予定はありません。「欣喜ラウンド」は和字書体「ロンド」として販売しています。
全く注目されなかったのが[カリグラフィ・タイプ]の「欣喜楷書」「欣喜隷書」「欣喜行書」です。私としては当時一番推していたので、自主制作でそれぞれ漢字1,000余制作し、無料頒布していた時期がありました。これが現在の「いぬまる吉備楷書」「さるまる吉備隷書」「きじまる吉備行書」になっています(販売していません)。