2020年10月16日

「きじまる吉備行書W3」

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佐藤豊氏の連載エッセイ「書体ウォッチャー」(2001/09/11)では、つぎのように続けている。
三部作の最後は「欣喜行書」らしい。私と同じように、彼もひとりで書体デザインをしているので、制作はそう簡単には進まないと思うが、三つの書体が完成したときには、何十年ものあいだ馬鹿のひとつ憶えのように明朝体に固執してきた書籍本文業界に、なんらかの刺激を与えるはず……と期待している。

行書もまたフェルトペンで書いたものから、漢字1,000字余だけの「欣喜行書・試用版」を制作し、無料頒布した。2001年のことである。
孔版の書体には行書体は存在しなかった。ヤスリの溝による制約があり、運筆に抑揚がつけられない孔版では、行書体を書くことはむずかしいのだろう。ただし欧字書体のスクリプトの見本が載っていたので、行書体もできないことはないと思った。もっぱら『書道教範』のペン字による行書体をお手本にして、「欣喜歩」に変更している。
さらに『中国硬筆書法字典』(司惠国・王玉孝主編、世界図書出版公司、2003年)には硬筆の隷書がみられたので、これを参考にして全面的に修整した。
行書体もまた原点に立ち返って「欣喜行書・試用版」から見直し、「きじまる吉備行書W3」として継続している。

posted by 今田欣一 at 08:52| 活字書体の履歴書・第3章(1994–2003) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする