活字書体というのは、書写からダイレクトに転換するということではなくて、いったんは彫刻の工程を経ています。活字書体にするには彫刻という工程を経なければなりません。書写から彫刻への転換によって様式化されます。さらに活字書体として合理化され、判別性や可読性がたかめられることになります。
書写から彫刻への第一歩として、篆刻を習うというのも無駄ではないように感じました。
よく「文字をつくる」という言い方をされますが、「文字をかく」と言ったほうがしっくりします。筆で「文字を書く」のに対し、印刀や彫刻刀で彫るときには「文字を画(か)く」のがぴったりです。そうすると活字書体設計でも「文字を画(か)く」ですね。いわゆるレタリングは「文字を描(か)く」というのでしょうか。
「篆刻入門講座」は、文部科学省の認定を受けた日本唯一の篆刻通信教育講座です。基本的な受講期間は7ヶ月ですが、課題は12回提出することになっています。教科書と指導書によって、学法・章法・刀法の重要なポイントを基本から体験していくことになります。篆刻の用具も、初心者向けではありますが、長い間使うことを考えた一級品がセットになっていました。
1期課題 朱文・白文の印稿、布字、印影の提出。
2期課題 二字印の印稿、印影の提出。
3期課題 漢印模刻の印稿、印影の提出。
4期課題 自己の雅印(朱文・白文)の印稿、印影の提出。
5期課題 自分で選んだ語句の印稿、印影の提出。
6期課題 5期課題の指導後の最終印影の提出。
ぼくは自主的に受講期間を12ヶ月に延長しました。自宅では「第11回石井賞創作タイプフェイスコンテスト」への応募に向けての制作をしているころでした。
舎短取長。短ヲ舎テ長ヲ取ル。短所や欠点を捨てて、美点や長所を選び伸ばすこと。