●『中国の書物と印刷』
2000年のある日のこと、池袋の大型書店で、私は一冊の書物に出会った。中国文化史ライブラリー『中国の書物と印刷』(張紹著、高津孝訳、日本エディタースクール出版部 1999年12月)である。1991年に中国で出版された『中国印刷史話』の翻訳だそうだ。訳者あとがきによれば、『中国印刷史』(張秀民著、上海人民出版社、1989年)などを参考にして、簡潔にまとめたものだという。
『中国の書物と印刷』には図版があまりなかった。そこで、『図解和漢印刷史』(長沢規矩也著 、汲古書院、1976年)を買い求めて、あわせてその字様を観察しはじめたのである。
●『印刷史研究』第8号
『印刷史研究』第8号(印刷史研究会、2000年7月)には、小宮山博史氏による「美華書館とその書体」が掲載されていた。美華書館という名前は知っていたがあまり詳しく知らなかった。とくに美華書館活字見本には目を奪われた。近代活字においても、中国に目を向けなければと思った。
●『西安碑林全集』
私が西安碑林博物館を訪れたのは1992年のことだった。その後、『西安碑林書道芸術』(陜西省博物館他編著、 陜西人民美術出版社、 1989年)を入手し、それをひたすら眺めていた。
最近になって、『西安碑林全集』(高峽主編、廣東經濟出版社、1999年12月)の一部を見ることができた。公開展示されていない碑石も含めて、開成石経を中心としたすべての蔵石の拓本の影印が収録されているという。電子複写が認められなかったのは残念なことだった(写真撮影は許された)。
このとき、漢代・唐代の碑刻、近代活字書体に、『中国の書物と印刷』による中国の整版印刷術と活字印刷術を加えて、漢字書体の歴史がつながったのである。
2014年7月24日改訂