2013年07月30日

[東池袋KIDS]1998年:和字書体のメヌエット

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●「日本語組版の歴史」資料図録

 1998年6月7日、中央大学駿河台記念館において「日本語の文字と組版を考える会」の第9回公開セミナーが開催された。200人を超える参加者だったという。テーマのひとつが、府川充男氏による「日本語組版の歴史」であった。そのときに配布されたのが、80ページにおよぶ資料図録であった。
 「日本語組版の歴史」というタイトルではあったが、見方を少し変えれば「活字書体の歴史」でもあった。そのなかで私の記憶に残ったのが、大鳥圭介の作った活字で組まれた『歩兵制律』であった。大鳥圭介は、私の出身高校の遠い先輩にあたる人なので、親近感をおぼえた。

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●「近代活版史夜話−−大鳥活字再校」

 大鳥圭介の活字および印刷物については、日本タイポグラフィ協会『タイポグラフィックス・ティ』145号(1992年)と、147、148号(同、1993年)に連載された、府川氏による「近代活版史夜話−−大鳥活字再校」に詳しく書かれていたことを思いだした。


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●3回連続セミナー資料

 「日本語組版の歴史」に引き続き、府川氏による3回連続セミナーが開催され、私はそのすべての回に参加することができた。そのときに配布された資料もたいへん充実したものだった。このセミナーは、おそらく『聚珍録』(府川充男著、三省堂、2005年)への前振りだったのだろう。
 講演の内容は年代別に整理されたものではなかったが、大雑把に言えば、第1回セミナーでは平野活版など明治初期の活字書体が、第2回セミナーでは築地活版、秀英舎を中心とした明治時代の活字書体が、そして第3回セミナーでは、森川龍文堂、岩田母型、モトヤなどの昭和時代の活字書体が取り上げられていた。


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●『スフィンクス#04』(麻布書館、1986年)より

 1998年から遡ること12年前。『スフィンクス#04』(麻布書館、1986年)で、府川氏は、「和文組版雑纂 字体と書体」という文章を書いている。そのなかで私は、府川氏自作の簡易文字盤「粘葉本和漢朗詠集モドキ一〇一」などの組み見本に目を奪われた。このとき、写本の書体にも強い興味をひかれたのであった。

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●字游工房制作の和字書体

1995年に現ダイナコムウエア株式会社から発売されたDFP 隷書体、1996年に発売されたDFP 魏碑体、1997年に発売されたDFP 新宋体などの和字書体の設計を担当したのが字游工房である。これらにも刺激を受けた。
2014年7月24日改訂

posted by 今田欣一 at 08:01| 漫遊◇東池袋ベース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする