
●『日経デザイン』(1997年1月号)
事務所開設の少し前のことである。デジタルパブリッシング・ジャーナリストの柴田忠男さんから取材の申し込みがあった。柴田さんとは、杏橋達磨さん主宰の勉強会で挨拶しただけだったので驚いた。

●「デジタルフォント開発の現場から」冒頭のページ
そのときの記事が『日経デザイン』(1997年1月号)の「デジタルフォント開発の現場から」である。株式会社タイプバンク、有限会社字游工房などとならんで、私(会社設立準備中だったので個人名になっている)も取り上げていただいたのだ。
ここに提案しているオリジナルタイプフェースは、人間味を大切にしているという。デジタルの時代でも、文字は人間の手が生み出すものだと考えているそうだ。フォントベンダーに気に入ってもらえれば、独占的使用許諾の契約を結び、開発費用を出してもらうわけである。幸い一部の書体のフォント化が実現しそうである。
現実的に商品化されたのは「イマリス」と「ぽっくる」にとどまった。これらはフォントベンダーの要望に沿ったものだ。私が本当に制作したかったものは、「すでに販売されているものと競合する」、「このような書体は社内で制作する」ということで不採用だった。
フォントベンダーとは「見出し用の派手な書体」でしか契約できないとわかったとき、自主販売への道をさぐることになった。同じような考えをもった人に出会うことができ、まず株式会社ベクターの「プロレジ」というシステムを利用することにした。のちに、「ほしくずや」として他のダウンロード・サイトへ展開していくことになる。
また、硬筆書体として試作した「欣喜楷書」、「欣喜行書」、「欣喜隷書」は、とりあえず漢字1006字だけの試用版として、無料頒布しようと考えていた。
2014年7月24日改訂