2017年02月17日

ほしくずやC にぎわいの物語

「ほしくずや」ブランドは、グランドファミリー化をめざした「くみうた」「ときわぎ」「みそら」につづいて、欧字書体と漢字書体の一般的なカテゴリーのうち和字書体が存在していないものを作ることだった。
欧字書体のカテゴリーのうち、「ブラックレター体」系統と「スクリプト体」系統に対応する書体と、最近の傾向でもある「ラウンドサンセリフ体」に対応する書体も加えることにした。

ブラックレターと魏碑体と
「ブラックレター体」に対応する漢字書体は「魏碑体」ではないだろうかと考えた。わが国では、台湾のダイナコムウェアの「魏碑体」が知られているが、北京の方正などでも制作されている。「ブラックレター体」と「魏碑体」とは時代も書字の道具も異なっているが、なんとなく同じ匂いがしたのである。漢字書体の「魏碑体」、欧字書体の「ブラックレター体」との組み合わせを想定した「タクト」「カルテ」「ザイル」を制作した。「タクト」は藤原俊成、「カルテ」は白隠慧鶴、「ザイル」は高塚竹堂の書を参考にして、刻字風にデザインした。

スクリプトと痩金体と
「スクリプト体」に対応する漢字書体は「痩金体」ではないだろうか。草書や行書では毛筆のイメージが強く、合わないように思える。「痩金体」も台湾のダイナコムウェアをはじめ、いくつかのベンダーで制作されている。漢字書体の「痩金体」、欧字書体の「スクリプト体」との組み合わせを想定して、『人と筆跡―明治・大正・昭和―』(サントリー美術館、1987年)の図版などを参考にして、「たうち」「さなえ」「いなほ」「まき」の4書体を制作した。

ラウンドサンセリフと円体と
もうひとつの「ラウンドサンセリフ体」は、漢字書体の「円体」と組み合わせたい。わが国では丸ゴシック体といっているもので、日本では看板などで好まれている書体である。漢字書体の円体(丸ゴシック体)、欧字書体のラウンドサンセリフとの組み合わせを想定して、「アンジェーヌ」「ルリユール」「テアトル」を制作した。「ルリユール」は、『図案文字大観』第五版(矢島週一著、彰文館書店、1928年)などを参考にした。

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2017年02月15日

ほしくずやB みそらの物語

「セイム」「テンガ」「ウダイ」の総称を「みそら」クランとしている。「みそら」(御空)とは、空の美称である。
「セイム」は、欧字書体のローマン体、漢字書体の現代明朝体と組みあわせる和字書体として制作したものである。つぎに、欧字書体のサンセリフ体、漢字書体の黒体(現代ゴシック体)と組みあわせる和字書体として、「テンガ」を制作した。また、欧字書体のスラブセリフ体、漢字書体の黒宋体(現代アンチック体)と組みあわせる和字書体として「ウダイ」を制作した。
『レタリング 上手な字を書く最短コース』(谷欣伍著、アトリエ出版社、1982年)の本文に使われていた試作書体からひらめいて、現代的な明朝体、ゴシック体などに組み合わせられるように設計した。

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制作した当初、漢字書体は平成書体を念頭に考えていたので、ウエイトもそれぞれ、W3、W5、W7、W9を制作している。平成明朝、平成ゴシックはあるが、平成アンチックは制作されていない。そもそも漢字書体のアンチック体など、当時は存在しなかったのだから仕方のないことだ。
どこかで、○○明朝ファミリー、○○ゴシックファミリー、○○アンチックファミリーが揃ったとき、「セイム」「テンガ」「ウダイ」の更なる展開が期待できる。「ウダイ」は一番人気があるので、なおさらそう思うのである。
posted by 今田欣一 at 13:54| 漫遊◇東池袋ベース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月13日

白澤書体で写植文字盤をつくろう(二)

簡易文字盤「四葉」をもちいて写真植字用の文字盤をつくるというプロジェクトのサンプルとして、 フィルムに原字(仮想ボディ48mm)をデザインしたものを縮小して、「簡易文字盤 文樹・四葉 デザイン用紙」に貼付してみた。

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デザイン用紙という名称であるが、「原版」に当たるものである。初期のころには紙の原版も用いられていたが、製品となるものはガラス製の原版であり、テスト用でもフィルム原版だった。簡易文字盤としては、この台紙が用意されていた。
原字48mmを12.75mmに縮小する。これも製品の原版とは異なる寸法である。あくまで簡易なので、ユーザーのためにやりやすくしたものと思われる。印刷されたピッチにセンター・トンボを合わせて、「白澤中明朝体」「白澤太ゴシック体」「白澤太アンチック体」それぞれを一文字ずつ切り離して貼り込んでいく。これを仮想ボディ4.25mmに縮小してネガフィルムにして貼り込めば、簡易文字盤「四葉」の完成となる。
簡易文字盤「四葉」はこのようにして作ったという追体験をすることがこのプロジェクトの目的である。今回作成した「原版」は、だいたいこのようなイメージになるという説明のために作成したものだ。印刷された台紙をコピーして作ったものなので精度が著しく劣る。実際に制作するときには、精度のいい台紙を新しくつくろうと思っている。
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2017年02月12日

ほしくずやA くみうたの物語

明治時代の木版教科書、『中等国文 二の巻上』(1896年、東京・吉川半七藏版)に所収されている「択捉島」(近藤守重)などの本文は楷書体だが、「蝦夷よりの手紙」(近藤守重)は行書体なのだ。
彫刻の味わいが残るいい書体だと思った。毛筆で書かれた文字が、彫刻刀でなぞられることによって力強さが加味されたようだ。じんわりと好きになってきた。
欧字書体のローマン体とセットになったイタリック体を思い出した。そこで楷書体と行書体、それぞれに組み合わされることを想定した和字書体を制作することができないものかと考え、楷書体と組み合わせる和字書体を「ゆきぐみ」、行書体と組み合わせる和字書体を「はなぐみ」として制作した。

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さらに昭和初期の地図『東京』(1934年、大日本帝国陸地測量部)の等線の手書き文字を参考にして、隷書体と組み合わせることを想定した和字書体を加えた。これが「つきぐみ」である。漢字書体の楷書体・行書体・隷書体をむすぶ書体の一族が誕生したのである。
「ゆきぐみ」を明朝体に、「つきぐみ」をゴシック体に組み合わせる和字書体を同じコンセプトで制作することにした。「ゆきぐみラージ」「つきぐみラージ」である。漢字書体の楷書体・行書体・隷書体にくわえて、明朝体・ゴシック体をふくみ、それぞれがファミリーを形成するという今までにない壮大な構想ができあがった。

これらの総称を「くみうた」クランとした。「くみうた」(組唄)とは、三味線や琴で既成の歌詞をいくつか組み合わせて1曲に作曲したものである。「くみうた」クランは、和字書体のみとした。
日本語を組むためには漢字書体、欧字書体も必要だが、これらは他社の書体との混植することを前提にしている。どこか特定のメーカーということではない。主要なメーカーを、「くみうた」クランでつないでいくということなのである。
同じウエイト表記であっても、メーカーによって微妙な違いがあるので、たとえば「モトヤフォント用」「イワタフォント用」というような、各メーカーに対応したバリエーションを、微調整しながら作るという方向もあるのではないかと思う。
posted by 今田欣一 at 08:43| 漫遊◇東池袋ベース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月08日

ほしくずや@ ときわぎの物語

各社の漢字書体に対応する和字書体、「ときわぎロマンチック」「ときわぎゴチック」「ときわぎアンチック」を制作しようとずっと思っていた。それに加えて「ときわぎクラシック」を加えた4ファミリーという構想である。
「ときわぎロマンチック」の参考にしたのは、『右門捕物帖全集 第四巻』(佐々木味津三著、鱒書房、1956年)の本文に使用されている、力のある和字書体である。復刻ではなく、これを参考にしながら新しく画き起こした。

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「ときわぎロマンチックW3」は本文用和字である。漢字書体は各社の本文用近代明朝体と混植する。1950年代に印刷された金属活字にみられる力強くしなやかな雰囲気を醸し出すことを目標にして制作している。
「ときわぎ」(常磐木)とは、松や杉などのように一年中、葉が緑色の木、常緑樹のことである。末永く使われるように、丁寧に作り上げたい書体なのだ。

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近代明朝体と組み合わせる和字(ひらがな・カタカナ)書体「ときわぎロマンチック」のイメージに合わせて、「ときわぎゴチック」と「ときわぎアンチック」、「ときわぎクラシック」も制作した。
漢字のゴシック体と組み合わされる和字書体が「ときわぎゴシック」である。「ときわぎゴチックW6」は、小見出し用の和字書体である。漢字書体は各社のゴシック体と混植する。「ときわぎアンチックW6」は、小見出し用の和字書体である。漢字書体のアンチック体をどのメーカーも作りそうにもないので、「ときわぎアンチック」は当面、漢字書体は各社のゴシック体と混植する。「ときわぎクラシック」は、混植できる漢字書体の宋朝体が少ないので、当面はペンディングとしたい。「ときわぎロマンチックW3」「ときわぎアンチックW6」「ときわぎゴチックW6」の3書体は、2015年5月9日からDL marketで発売している。
posted by 今田欣一 at 17:29| 漫遊◇東池袋ベース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする