2016年10月15日

[書写]筆耕あれこれ

中学校の国語科『書写』では、資料として「封筒・はがきの表書き」や「のし袋」などが挙げられています。こういうことを職業としているのが「筆耕」です。「筆耕」とは、写字や清書で報酬を得る人をいいます。
具体的には、表彰状や感謝状、手紙などの宛名書き、式辞、記章、熨斗(のし)を毛筆で書くことを生業としています。ほかにも、卒業証書、各種目録、家系図、結婚式の招待状、宴会の献立や座席札、遺書にいたるまで多岐にわたっています。
公的な資格はありません。筆耕専門の会社のほか、ホテル、神社仏閣、一般企業などに所属しています。フリーランスの人もいるそうです。
「筆耕」は通信教育で学ぶこともできます。代表的なものは次のふたつ。とりあえず資料を請求してみました。

賞状技法士養成講座(たのまな)
 
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実用賞状書士養成講座(がくぶん)

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どちらも賞状とついていますが、宛名書きや熨斗なども含まれています。
賞状技法士と賞状書士の大きな違いはなさそうですが、それぞれ独自に行っている資格制度があります。

このほかにも賞状書法講座(ユーキャン)など、いろいろあるようです。

「筆耕」といえるかどうかはわかりませんが、墓石、表札、木版印刷の版下なども同様に毛筆で書きます。これを石や木に彫刻する石工や版木彫刻師は、レタリングに近い仕事だと思います。
活字の版下として「筆耕」の人に揮毫を依頼する場合がありますが(書体作家などと称されています)、これはタイプフェイスデザインということになります。


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2016年10月09日

[レタリング]レタリング専科(日本通信美術学園)のこと

レタリングは中学1年生の美術の授業で学習するのですが、私はその前に、日本通信美術学園の通信教育の「レタリング専科」というのを受講していました(修了したのは延長期間いっぱいの1968年9月)。その分、同級生より少しは上手にできたので、得意になっていたことを思い出します。
そのときの「レタリング専科」のテキストを見てみますと、今では見られない技術もありますが、基本的なところでは今でも十分に通用するのではないかと思います。

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1 教養基本編
■ 勉強のはじめに ■デザインとレタリング ■文字と書体 ■文字の組み立て


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2 和文技術編(上) ※漢字のレタリング
■ 技術編のはじめに ■原字体とその練習 ■用具・用法・用材 ■明朝体とその構造 ■割り出し ■運筆(筆順)


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3 和文技術編(下) ※かなのレタリング
■ ひらがな・カタカナ ■カタカナの基本点画 ■ひらがなの基本点画 ■「かな」のスタイルブック
※レタリングの関連として、当時のデザイン技法についても書かれています。
■応用技術の実際 ■特殊技法


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4 英字技術編(上)
■アルファベットの書体 ■字体構造と書き方 ■基本書体 ■スクリプト(筆記体)


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5 英字技術編(下)
■書体とデザイン ■変化と方法 ■基本書体2 ■オーナメント(装飾体) ■制作と実際


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6 作品応用編
■作品と鑑賞 ポスター、表紙・装釘、小型印刷物、新聞・雑誌・広告、パッケージ、ディスプレイ、マーク、タイトル


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ほかに副教材として、『デザイナーとして世に出るまで』と『当用漢字/明朝体辞典』がついていました。『デザイナーとして世に出るまで』は今読み返すと当時の状況がわかるので懐かしく思いました。また『当用漢字/明朝体辞典』はレタリングからタイプフェイスデザインへとつながるものですが、この10年後に写真植字機の会社に入社することになろうとは思ってもいませんでした。

レタリング技能検定の試験は、2012年(平成24年)4月1日から、これまでの「財団法人実務技能検定協会」から「公益財団法人国際文化カレッジ」へ移管され、現在も継続して実施されています。
 通信教育での「レタリング講座」は見かけなくなりました。近い将来、新しい技術に対応した講座が開講され、タイトルデザインやロゴタイプ、シンボルマークなどのレタリング分野がますます発展することを願っています。
posted by 今田欣一 at 19:36| 事始◇書写とレタリングと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする