2017年02月17日

ほしくずやC にぎわいの物語

札幌市南区にある「札幌芸術の森」は、新しい札幌の文化を育てることを目的として、1986年(昭和61年)にオープンした複合施設である。豊かな大自然と都市・芸術・文化が調和した環境づくりと、北方の新しい芸術・文化の創造をめざしている。広大な敷地には、国内外の彫刻作品を常設展示する「札幌芸術の森野外美術館」をはじめ、「札幌芸術の森美術館」や「工芸館」などでの展示のほか、工房、アトリエ、野外ステージ、アートホールなどがある。この緑豊かな自然に包まれて隣接するのが、札幌市立大学・芸術の森キャンパス(デザイン学部)である。

「ほしくずや」ブランドは、グランドファミリー化をめざした「くみうた」「ときわぎ」「みそら」につづいて、欧字書体と漢字書体の一般的なカテゴリーのうち和字書体が存在していないものを作ることだった。
欧字書体のカテゴリーのうち、「ブラックレター体」系統と「スクリプト体」系統に対応する書体と、最近の傾向でもある「ラウンドサンセリフ体」に対応する書体も加えることにした。

ブラックレターと魏碑体と
「ブラックレター体」に対応する漢字書体は「魏碑体」ではないだろうかと考えた。わが国では、台湾のダイナコムウェアの「魏碑体」が知られているが、北京の方正などでも制作されている。「ブラックレター体」と「魏碑体」とは時代も書字の道具も異なっているが、なんとなく同じ匂いがしたのである。漢字書体の「魏碑体」、欧字書体の「ブラックレター体」との組み合わせを想定した「タクト」「カルテ」「ザイル」を制作した。「タクト」は藤原俊成、「カルテ」は白隠慧鶴、「ザイル」は高塚竹堂の書を参考にして、刻字風にデザインした。

スクリプトと痩金体と
「スクリプト体」に対応する漢字書体は「痩金体」ではないだろうか。草書や行書では毛筆のイメージが強く、合わないように思える。「痩金体」も台湾のダイナコムウェアをはじめ、いくつかのベンダーで制作されている。漢字書体の「痩金体」、欧字書体の「スクリプト体」との組み合わせを想定して、『人と筆跡―明治・大正・昭和―』(サントリー美術館、1987年)の図版などを参考にして、「たうち」「さなえ」「いなほ」「まき」の4書体を制作した。

ラウンドサンセリフと円体と
もうひとつの「ラウンドサンセリフ体」は、漢字書体の「円体」と組み合わせたい。わが国では丸ゴシック体といっているもので、日本では看板などで好まれている書体である。漢字書体の円体(丸ゴシック体)、欧字書体のラウンドサンセリフとの組み合わせを想定して、「アンジェーヌ」「ルリユール」「テアトル」を制作した。「ルリユール」は、『図案文字大観』第五版(矢島週一著、彰文館書店、1928年)などを参考にした。

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2017年02月15日

ほしくずやB みそらの物語

札幌市北区に本社がある「イメージナビ株式会社(旧社名データクラフト株式会社)」と委託契約を結び、同社の運営する「designpocket」というサイトでダウンロード方式によるデジタルタイプの販売を始めたのは2008年のことだから、もう10年近くになる。
同社では、「イメージズ事業」および「ソリューション事業」を展開している。前者では高品質ストックフォト、フォントのダウンロード販売サイトなどの運営、後者ではウェブサイトの企画・デザイン・構築・運用、ウェブシステムの受託開発を行っている。


「セイム」「テンガ」「ウダイ」の総称を「みそら」クランとしている。「みそら」(御空)とは、空の美称である。
「セイム」は、欧字書体のローマン体、漢字書体の現代明朝体と組みあわせる和字書体として制作したものである。つぎに、欧字書体のサンセリフ体、漢字書体の黒体(現代ゴシック体)と組みあわせる和字書体として、「テンガ」を制作した。また、欧字書体のスラブセリフ体、漢字書体の黒宋体(現代アンチック体)と組みあわせる和字書体として「ウダイ」を制作した。
『レタリング 上手な字を書く最短コース』(谷欣伍著、アトリエ出版社、1982年)の本文に使われていた試作書体からひらめいて、現代的な明朝体、ゴシック体などに組み合わせられるように設計した。

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制作した当初、漢字書体は平成書体を念頭に考えていたので、ウエイトもそれぞれ、W3、W5、W7、W9を制作している。平成明朝、平成ゴシックはあるが、平成アンチックは制作されていない。そもそも漢字書体のアンチック体など、当時は存在しなかったのだから仕方のないことだ。
どこかで、○○明朝ファミリー、○○ゴシックファミリー、○○アンチックファミリーが揃ったとき、「セイム」「テンガ」「ウダイ」の更なる展開が期待できる。「ウダイ」は一番人気があるので、なおさらそう思うのである。
posted by 今田欣一 at 13:54| スターダスト・メモリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月12日

ほしくずやA くみうたの物語

札幌市厚別区にある「北海道開拓の村」は北海道百年を記念して設置された野外博物館で、1983年(昭和58年)に開村した。北海道の開拓の過程における生活と産業・経済・文化の歴史を示す建造物等を移設、復元して保存している。
ビジターセンターは1873年(明治6年)に建てられた「旧開拓使札幌本庁舎」を再現したものである。開拓当時の情景も再現して、北海道の開拓の歴史を身近に学ぶことのできるほか、開拓時代当時の年中行事の再現や、当時の遊戯文化や伝統技術の伝承活動も行っている。


明治時代の木版教科書、『中等国文 二の巻上』(1896年、東京・吉川半七藏版)に所収されている「択捉島」(近藤守重)などの本文は楷書体だが、「蝦夷よりの手紙」(近藤守重)は行書体なのだ。
彫刻の味わいが残るいい書体だと思った。毛筆で書かれた文字が、彫刻刀でなぞられることによって力強さが加味されたようだ。じんわりと好きになってきた。
欧字書体のローマン体とセットになったイタリック体を思い出した。そこで楷書体と行書体、それぞれに組み合わされることを想定した和字書体を制作することができないものかと考え、楷書体と組み合わせる和字書体を「ゆきぐみ」、行書体と組み合わせる和字書体を「はなぐみ」として制作した。

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さらに昭和初期の地図『東京』(1934年、大日本帝国陸地測量部)の等線の手書き文字を参考にして、隷書体と組み合わせることを想定した和字書体を加えた。これが「つきぐみ」である。漢字書体の楷書体・行書体・隷書体をむすぶ書体の一族が誕生したのである。
「ゆきぐみ」を明朝体に、「つきぐみ」をゴシック体に組み合わせる和字書体を同じコンセプトで制作することにした。「ゆきぐみラージ」「つきぐみラージ」である。漢字書体の楷書体・行書体・隷書体にくわえて、明朝体・ゴシック体をふくみ、それぞれがファミリーを形成するという今までにない壮大な構想ができあがった。

これらの総称を「くみうた」クランとした。「くみうた」(組唄)とは、三味線や琴で既成の歌詞をいくつか組み合わせて1曲に作曲したものである。「くみうた」クランは、和字書体のみとした。
日本語を組むためには漢字書体、欧字書体も必要だが、これらは他社の書体との混植することを前提にしている。どこか特定のメーカーということではない。主要なメーカーを、「くみうた」クランでつないでいくということなのである。
同じウエイト表記であっても、メーカーによって微妙な違いがあるので、たとえば「モトヤフォント用」「イワタフォント用」というような、各メーカーに対応したバリエーションを、微調整しながら作るという方向もあるのではないかと思う。
posted by 今田欣一 at 08:43| スターダスト・メモリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする