2013年08月25日

[筆のバラード]連綿なんてララッラーララララーラの巻

 「ペン習字教育講座」の修了から2年あまり。それでも毛筆の使い方をやっておいたほうがいいのかなあと思いついて、「書道基礎科講座」に入学しました。

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●「書道基礎科講座」の「かな編」

 「書道基礎科講座」には「楷書編」「行書編」「草書編」とともに、「かな編」がありました。「かな編」の受講期間は3ヶ月で、課題も3回提出しました。

1期課題 単体、連綿、変体かなの学習(半紙1枚に清書)
2期課題 粘葉本和漢朗詠集、古今集高野切第三種の臨書(一つを選んで半紙1枚に清書)
3期課題 若山牧水の短歌(半紙1枚に清書)


 怠け者のぼくは、提出課題をこなすだけでアップアップだったのですが、この他にも多くの練習課題やら設問などが用意されており、より深く学ぼうとすれば、かなりのレベルまでできることになっているようです。

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●「書道専攻科講座」の「かな編」

 基礎科が修了してからすぐに「書道専攻科講座」の受講を申し込みました。「書道専攻科講座」では、「楷書編」「行書編」「草書編」「かな編」に「篆隷編」が加わります。
「書道専攻科講座」にも「かな編」がありました。教科書と学習指導書により5ヶ月間、学習を行いました。提出課題だけで各編5回と総括課題の計6回あり、各回の課題はそれぞれ正・副2枚を提出しなければなりませんでした。ぼくにはなかなかハードだったなあ。

1期課題 基本用筆と正しい連綿で半紙に書く
2期課題 臨書課題「蓬萊切」を半紙に清書する
3期課題 臨書課題「寸松庵色紙」を半紙に清書する
4期課題 貝原益軒の文章を画仙紙半切二分の一の大きさに体裁よく書く
5期課題 大伴家持の和歌を画仙紙半切に体裁よく書く
総括課題 1期課題をもう一度書く


 書道としての「かな編」の大きなポイントのひとつとして、連綿と変体がなの使用がありました。
 これを活字書体でやろうという試みは少なからずあったようですが、ことごとく失敗に終わっています。ただジョイントするだけならば簡単なことで、その程度ならばコンペでもよく出品されていますが、それでは作為的になってしまうようです。
 「かな」の場合には右に流れるのが自然なのですが、ジョイント方式だと「かな」の位置がまっすぐに並ぶだけなのです。それを無理にジョイントしようとすれば、かえって読みにくくなってしまいます。それでは単体の「かな」をプロポーショナルで並べればいいだけだと思うのです。ここが欧字とはちがうところです。
 また連綿させるうえでは、変体がなを使う必要があります。そうでないと、うまくつながらないことのほうが多いのです。連綿ということだけではなくて、どういう変体がなを使うかによって、文章全体のイメージが異なってくるということもあります。書写においては、変体がなの使用によって流れに変化をつけたりすることがあります。
 じつは、ぼくも連綿の活字書体化に挑戦しようとしたことがあります。『女子はがき用文 全』(小野鵞堂編書、博文館・吉川弘文館、1911年)をベースにしたものでした。単体の「かな」をジョイントさせるという発想ではなく、連綿の「かな」を合字として制作しようとしたものでした。

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●連綿体の試作書体

 これではかな書道の連綿には遠く及びません。力不足のために、中途半端なところで挫折してしまいました。つながっていることが連綿ではありません。見かけだけの連綿もどきをやってはいけないのではないかと。実用性はどうかという問題もありました。
 かくして、連綿はかな書道の領域として、ぼくはこれ以上踏み込むべきではないと思ったのでした。ぼくは……です、あくまでも。

 そういえば、「書道基礎科講座」でも「書道専攻科講座」でも、「連綿が不十分」と評価されていたことが何度もあったっけ。
posted by 今田欣一 at 09:16| 筆のバラード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月24日

[筆のバラード]ペンの力を侮るなかれの巻

 活字書体設計のために必要なのは「書道」ではなく「習字」だと考えて、「ペン習字教育講座」に入学したのは1980年7月のことでした。
 仕事では「秀英明朝」や「かな民友明朝」と「かな民友ゴシック」、自宅では「第7回石井賞創作タイプフェイスコンテスト」への応募に向けての制作をしているころでしょうか。つまり、活字書体の復刻を仕事でやりながら、自宅では書字の基礎を学び、コンペで新しい試みにもチャレンジするという、対照的なことをしていたのですね。
 当時は、まだワードプロセッサーは一般的ではありませんでした。会社では、「企画書」や「仕様書」などもすべて手書きでした。もっとも、パーソナルコンピューターが一般的になってからも、写真植字の会社でしたので、自社書体を搭載していないパーソナルコンピューターの導入には消極的でしたね。
 「企画書」や「仕様書」を書くときには、パイロットの「デスクペン」を使っていました。ペン軸のついた万年筆です。値段も手頃で、インク・カートリッジが使えたので使い勝手がよかったのです。

 ペンの力を侮るなかれ……でした。
 「ペン習字教育講座」では、日本語の文章すなわち漢字かな交じり文の書写を学びます。当初は気軽にできるということで始めたのですが、そこには、初心者として必要なことはすべて入っていました。ちがいは、毛筆であるか、ペン(鋼筆)であるかだけです。その素材によって書写されたもののイメージは少しことなるようですが、基本は同じなのでしょう。
 動物の毛を材料にしたのが「毛筆」、黒鉛の粉末を材料にしたのが「鉛筆」、ペンは「鋼筆」です。ボールペン(圓珠筆)やフェルトペン(毡頭筆)など、筆記具には「筆」という字が使われています。毛筆もペンも記すための用具ということでは同じ「筆」なのです。

 「ペン習字教育講座」は、毛筆をのぞいた「日本語書写の総合講座」ともいえるものでした。ざっくりと、その内容を紹介しておきましょう。

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●「ペン習字教育講座」教科書 上

 上巻の内容は、ひらがな・カタカナ、漢字の基本(楷書・行書)、ローマ字について勉強し、漢字かな交じり文(縦書きと横書き)でした。 
 漢字では楷書の「孔子廟堂碑」や行書の「蘭亭叙」など、毛筆で取り上げられるような古典がペン習字の基本として掲載されています。かなでは「高野切第三種」と「粘葉本和漢朗詠集」がペン字による臨書とともに挙げられています。さらに、カタカナの臨書の手本として「三宝絵詞」が取り上げられているのには驚かされました。ローマ字は小学校の英習字レベルですが、「手書き体(マヌ・スクリプト体)」と「筆記体(スクリプト体)」の2種類がありました。
 漢字(楷書)かな交じり文と、漢字(行書)かな交じり文、それぞれの縦書きと横書きが同じくらいの割合で出てきます。漢字かな交じり文の横書きは、「書道」の講座ではあまり出てこないものです。

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●「ペン習字教育講座」教科書 下

 上巻を基礎編とすれば、下巻は応用編というべきものです。「書道」ではなく「習字」なので、実用性を重んじているようでした。
 まず、漢詩、短歌、俳句、詩を書くという課題からはじまりました。ここにいたって章法、レイアウトが加わります。ここでも古典の鑑賞として「寸松庵色紙」や「升色紙」が示されています。つづいて、手紙文、封筒、はがき、いろいろな書式で書く、ノート、日記、原稿用紙に書くという課題です。「趙子昂行書千字文」が示されるなど、ペン字といえども古典の大切さを教えてくれます。
 おまけのような感じですが、筆記具や場面のバリエーションについて。鉛筆、ボールペン(圓珠筆)やフェルトペン(毡頭筆)などを用いて、のし袋や小包の表書きなどを書くという課題や、速書きについての練習。草書の基本が簡単にあり、視写・聴写の方法も示されています。

 受講期間は12ヶ月でした。課題も12回提出しました。12回の課題を提出し、 課題作品は添削指導され、講評と評点がつけられました。評点は100点法によって採点されましたが、まずまずといったところだったでしょうか(自分にあまい)。
 いまはペンで書くことはすっかりなくなりましたし、ぼくの場合、それほど上手になったというわけでもなさそうです。活字書体(日本語総合書体)制作のうえで、役にたっているかどうかはわかりません。ただ、「ペン習字教育講座」で「書写」の基礎の基礎を学んだということは確かなことです。
posted by 今田欣一 at 09:17| 筆のバラード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月08日

[筆のバラード]1980年代の通教生活

 通信教育が好きだということではないのですけどね。会社で推奨しているものも含めて、趣味、語学、自己啓発など、いろいろな分野で受講したものです。私にとっていちばん思い出深いのは、日本書道教育学会の4講座と、日本カリグラフィー協会CLAの1講座でしたね。
 まず日本書道教育学会の「ペン習字教育講座」(1981年9月30日修了)を受講しました。毛筆は好きではなかったのですが、「書道基礎科講座」(1985年3月31日修了)、「書道専攻科講座」(1988年1月31日修了)とつづけて受講しましたよ。さらに同じ日本書道教育学会の「篆刻入門講座」(1989年4月30日修了)を受講しました。ま、成績はよくなかったけどさ。
 やはり欧字も……と思いましたが、日本書道教育学会にはカリグラフィーはありませんでした。そこで、1990年代に入ってから、日本カリグラフィー協会CLAの「カリグラフィー講座」も受講することにしました。これは修了しませんでしたが、得るものは少なくなかったと思っていますよ。

 活字書体設計者には、書道の素養は必要なのでしょうか。
 小学校の「書写」は国語科にふくまれています。中学校でも国語科にふくまれているのです。小学校では楷書だけだったけど、中学校では行書がくわわり、また、漢字とひらがな・カタカナの調和がもとめられています。目的や必要に応じて調和よく書くこと、読みやすく速く書くことがあげられています。つまり小学校と中学校では「書写」であって「書道」ではないのです。その目標は活字書体設計にも共通するようですね。

(ア) 文字を正しく書くこと。
(イ) 文字の形を整えて書くこと。
(ウ) 読みやすく書くこと。


 高校になると、芸術科のなかに「書道」としてふくまれます。「書道」となると、国語科の「書写」とはまったく異なる目標があげられていますね。

〔書道1〕 書道の幅広い活動を通して、書を愛好する心情を育てるとともに、感性を豊かにし、書写能力を高め、表現と鑑賞の基礎的な能力を伸ばす。
〔書道2〕 書道の創造的な諸活動を通して、書を愛好する心情を育てるとともに、感性を高め、書の文化や伝統についての理解を深め、個性豊かな表現と鑑賞の能力を伸ばす。
〔書道3〕 書道の創造的な諸活動を通して、生涯にわたり書を愛好する心情と書の文化や伝統を尊重する態度を育てるとともに、感性を磨き、個性豊かな書の能力を高める。


 したがって活字書体設計の基礎を考えるうえでは、「書道」ではなく「書写」について、さらに深めていく必要があるのではないかと。ただ通信教育では「書写」の講座はありませんでした。「書道」の講座で、「書写」を学ぶという気持ちで通信教育を受講しました。結果的には、「書道」の講座をやってよかったと思っています。
 作品制作ということにはまったく興味がなかったので、競書誌「ペンの力」や「不二」への出品はすぐにやめてしまいました。まあ、身に付かなかったことの言い訳なのですけどね。
posted by 今田欣一 at 08:53| 筆のバラード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする