2017年02月20日

[初心不可忘]原点にかえって

石井茂吉(1887−1963)は、写真植字機を普及させるために必要な書体として、1930年から1935年までに、本文用の明朝体(のちの石井中明朝体+オールドスタイル小がな)、太ゴシック体(のちの石井太ゴシック体+小がな)、それにアンチック体(和字書体のみ)を制作しています。

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このうち「アンチック体」には漢字書体がありません。石井横太明朝体がこれに近いのではないかと思っています。

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書体設計の学習用プログラムとして、オリジナルの書体を試作してみることにしました。その新しい漢字書体を「白澤」と名付けました。白澤中明朝体、白澤太ゴシック体、そして白澤太アンチック体です。
中国で有徳の王の時代に現れるという想像上の神獣「白澤」。麒麟、鳳凰とくらべるとあまり知られていませんが、わが国でも魔除けや災難除けの御札になっているそうです。
posted by 今田欣一 at 21:02| 初心不可忘 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月19日

[初心不可忘]新入社員教育のこと

私が新入社員として、株式会社写研に就職したのは今から40年ほど前の1977年4月1日のことだった。一週間の新入社員教育期間(会社概要とか就業規則とか)を終えてから原字制作の職場に配属された。すぐに仕事につくのではなく、約3ヶ月間にわたって研修をうけることになった。
その研修で、最初に実習したのは石井細明朝体である。石井細明朝体の書体見本が配られた。この書体見本は仮想ボディ48mmサイズで、基準となる12文字が並べられている。部首、画数などの参考となる代表的な字種である。これを観察して、課題の字種を描いていくのである。
もうひとつ実習したのは石井太ゴシック体である。書体見本12字に合わせて、この8字を練習した。この8字はすでにあるのだが、もちろんそれを見ることはできない。同じ書体を、同じ書体見本に合わせて、新入社員3名が同じ文字を描く。最初は石井太ゴシック体とは違うものになってしまうが、いろいろ指導をうけていくうちに、石井太ゴシック体となっていくのである。

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今このときに制作した原字(写真)をみると、まだまだだったと思うが、当時としては精一杯やった結果である。この新人研修のカリキュラムが、私にとっての書体制作の原点となっている。私だけではなく、写研の原字制作部門に配属されたすべての社員が経験しているので、同じような原字を保存しているはずである。そして、これらの原字からテスト文字盤を製作、テスト印字まで行われた(残念ながら、これらは持ち帰ることは認められなかった)。
その会社の書風に染まってしまうという人がいるが、そのようなことはない。書体見本のイメージでほかの文字を描くということであって、課題に石井細明朝体と石井太ゴシック体が与えられたということである。岩田明朝体やモトヤ明朝体であれば、その書体に合わせるということだ。
この新人研修のカリキュラムが、原字制作の初心者にとって、今でも有効な方法だと私は思っている。
posted by 今田欣一 at 12:50| 初心不可忘 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月17日

ほしくずやC にぎわいの物語

札幌市南区にある「札幌芸術の森」は、新しい札幌の文化を育てることを目的として、1986年(昭和61年)にオープンした複合施設である。豊かな大自然と都市・芸術・文化が調和した環境づくりと、北方の新しい芸術・文化の創造をめざしている。広大な敷地には、国内外の彫刻作品を常設展示する「札幌芸術の森野外美術館」をはじめ、「札幌芸術の森美術館」や「工芸館」などでの展示のほか、工房、アトリエ、野外ステージ、アートホールなどがある。この緑豊かな自然に包まれて隣接するのが、札幌市立大学・芸術の森キャンパス(デザイン学部)である。

「ほしくずや」ブランドは、グランドファミリー化をめざした「くみうた」「ときわぎ」「みそら」につづいて、欧字書体と漢字書体の一般的なカテゴリーのうち和字書体が存在していないものを作ることだった。
欧字書体のカテゴリーのうち、「ブラックレター体」系統と「スクリプト体」系統に対応する書体と、最近の傾向でもある「ラウンドサンセリフ体」に対応する書体も加えることにした。

ブラックレターと魏碑体と
「ブラックレター体」に対応する漢字書体は「魏碑体」ではないだろうかと考えた。わが国では、台湾のダイナコムウェアの「魏碑体」が知られているが、北京の方正などでも制作されている。「ブラックレター体」と「魏碑体」とは時代も書字の道具も異なっているが、なんとなく同じ匂いがしたのである。漢字書体の「魏碑体」、欧字書体の「ブラックレター体」との組み合わせを想定した「タクト」「カルテ」「ザイル」を制作した。「タクト」は藤原俊成、「カルテ」は白隠慧鶴、「ザイル」は高塚竹堂の書を参考にして、刻字風にデザインした。

スクリプトと痩金体と
「スクリプト体」に対応する漢字書体は「痩金体」ではないだろうか。草書や行書では毛筆のイメージが強く、合わないように思える。「痩金体」も台湾のダイナコムウェアをはじめ、いくつかのベンダーで制作されている。漢字書体の「痩金体」、欧字書体の「スクリプト体」との組み合わせを想定して、『人と筆跡―明治・大正・昭和―』(サントリー美術館、1987年)の図版などを参考にして、「たうち」「さなえ」「いなほ」「まき」の4書体を制作した。

ラウンドサンセリフと円体と
もうひとつの「ラウンドサンセリフ体」は、漢字書体の「円体」と組み合わせたい。わが国では丸ゴシック体といっているもので、日本では看板などで好まれている書体である。漢字書体の円体(丸ゴシック体)、欧字書体のラウンドサンセリフとの組み合わせを想定して、「アンジェーヌ」「ルリユール」「テアトル」を制作した。「ルリユール」は、『図案文字大観』第五版(矢島週一著、彰文館書店、1928年)などを参考にした。

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posted by 今田欣一 at 08:19| スターダスト・メモリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする