2018年06月05日

[札幌の虹]札幌2018 開拓

札幌駅のすぐ近くにあるイメージナビ株式会社を訪ねた。

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イメージナビ株式会社は、デジタル素材総合販売サイトdesignpocketを運営しており、欣喜堂書体のダウンロード販売を委託して、今年で10年目になる。日頃はメールでやり取りをしていて、それで特に問題はないが、実際に担当している方に直接面談することも必要なことだ。

あとで思いついたことがある。
フォントとは書体デザインや書風を区別する用語ではない。同じ書体デザインであっても、フォント名にStdが付いたものとProが付いたものではグリフの集合が異なる別のフォントである。さらにフォント名にPr6とPr6Nという別の接尾辞が付いたものは、エンコーディング(文字コードとグリフとの対応関係)が一部異なる別のフォントなのである。
欣喜堂ではフォントという用語をもともとの「同じ書体での活字の一揃え」という意味で使っており、「KINKIDO FONT」という独自のフォントを考え、それぞれ別々の識別記号を付けるというのはどうだろうか。

KB (KINKIDO BASE FONT)
ひらがな・カタカナ・約物(記述記号・括弧記号)で構成される。漢字書体、欧字書体は含まれていない。欣喜堂のベースとしているフォントである。
KL (KINKIDO LAND FONT)
和字書体に、漢字書体と欧字書体を組み合わせたフォント。JISX 0208規格のうち、学術記号・ギリシア文字・キリール文字・罫線素片および半角カタカナは含まれない。IBM拡張文字も含まれない。同人誌、ミニコミ、リトルプレスの本文用として 製作するフォントである。
KO (KINKIDO OCEAN FONT)
一般印刷全般の本文用もしくは本文に準じる用途として製作するフォントである。基本的にはAdobe Japan 1-3, StdまたはStdNに準拠。欣喜堂では実現不可能ではあるが、Adobe Japan 1-6, Pr6あるいはPr6Nへの展開も考えられる。

このほかに「ほしくずや」として製作している書体のフォントもある。
SD (STARDUST DREAM FONT)
ほしくずやのブランドで、ひらがな・カタカナ・約物(記述記号・括弧記号)で構成される。KB (KINKIDO BASE FONT)と同じ字種である。
LT (KIDSLAB TRIAL FONT)
KIDSLABのプロトタイプとして製作しているフォントである。KL (KINKIDO LAND FONT) と同じ字種をめざしている。


大通公園を抜けて札幌市役所へ向かう。札幌市役所には札幌の礎を築いた開拓判官、島義勇(しまよしたけ)の銅像があるという。受付でどこにあるか尋ねる。「それでしたら、こちらにあります」と教えてくれた。なんと玄関フロアのすぐ右手にあった。聞くまでもなかったのだ。

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河 水 遠 流 山 峙 隅   河水遠くに流れて山隅にそばだつ
平 原 千 里 地 膏 腴   平原千里地は膏腴(こうゆ)
四 通 八 達 宜 開 府   四通八達宜しく府を開くべし
他 日 五 州 第 一 都   他日五州第一の都

銅像の下のプレートにはこのような漢詩が記されている。札幌に入った島義勇が札幌・円山のコタンベツの丘に登り、この地に本府を造ろうと決意した時に詠んだ詩である。情熱を持って実行に着手しようとする熱意が伝わってくるようである。

新潮社の文芸情報誌『波』2017年8月号、9月号に掲載された「鳥海修/あなたは今、どんな書体で読んでいますか?」では、書体選択の判断基準として「太さ」「大きさ」「大小の差」「線の抑揚」「柔らかさ」「フトコロ」「粘着度」「形の新旧」「普遍性」「濁点」という10項目を挙げて説明している。
これらは書体選択の判断基準ということなのだが、私は書体設計のコンセプトを考えるための指針として有効なことではないかと思う。そこで設計仕様書にまとめるために、これを考え直してみることにした。
10項目のうち、「太さ」「大きさ」「大小の差」というのは客観的に数値化できることだと思われる。「線の抑揚」「フトコロ」というのは数値化が難しいかもしれないが工夫すれば可能なのではないか。
最後に挙げられている「濁点」というのは和字書体設計におけるスペックのひとつである。使用サイズなども考えて、大きさや位置を決めていく。同様に「っ」「ゃ」などの大きさや位置の設定などもある。
「柔らかさ」「粘着度」「形の新旧」「普遍性」というのは、個人個人の印象によるものだ。ひとりの印象を押し付けるのではなく、イメージを数値化するという統計的な手法をとる必要があるのではないかと思う。
「柔らかさ」 柔らかい--硬い
「粘着度」 淡白な--濃厚な
「形の新旧」 新しい--古い
「普遍性」 一般的な--特殊な
以前から「明るくて現代的な書体です」とか「可愛くも妖しい書体です」とか制作者サイドの宣伝文句としてあるが、実際にどのような印象で受け止められるのだろうか。上記以外の尺度として、明るい--暗い、可愛い--凛々しい、暖かい--冷たい、ドライな--ウエットな、鋭い--鈍い、フォーマル--カジュアル、などが考えられ、書体設計において必要な項目でアンケートをとって分析するのも面白いのではないかと思う。
私はこれまで「太さ」「大きさ」などの造形的な事柄については検討してきたが、「柔らかさ」「粘着度」といった書体のイメージ調査について具体的に考えてなかった。
例えば、「フトコロが広い」書体が「明るい」イメージになるのか、ならないのか、書体のイメージと造形的な事柄とがどういう関係になっているのか興味深いところだ。さらに、年齢、性別で変わるのか、時代によって移り変わるものなのか、継続しての調査があればと思う。

再び市街に出る。5月というのにすごく寒い。札幌観光の定番中の定番、札幌市時計台(旧札幌農学校演武場)、赤レンガ庁舎(北海道庁旧本庁舎)を見学。どちらも多くの見学者が訪れていた。最後に、北海道大学総合博物館を見学する。

和字(かな)書体分類の私案は、『タイポグラフィ学会誌01』(タイポグラフィ学会、2007年)所収の研究ノート「和字書体の書体分類と展開」が基本となっている。そこでは、黎明本様体・明治本様体・昭和本様体・豊満本様体という漢字表記を提案した。
その後、和字書体には和語の表記が望ましいのではないかと考え、『アイデア349』(誠文堂新光社、2011年)の「今田欣一の書体設計 和字と漢字」では、めばえ・いぶき・さかえ・ゆたかという名称を使っている。私としてはこれを推したいのだが、残念ながら浸透していない。
『欣喜堂ふたむかし』(有限会社今田欣一デザイン室、2017年)の「和字書体のすがたカタチ 近代編」では、ドーンスタイル・オールドスタイル・ニュースタイル・モダンスタイルという表記を使っている。講演会ということもあり、現状で最もなじみのある言い方に戻した。
ただ、その分類基準が変わっているわけではなく、名称が和語ひらがな表記、漢字表記、外来語カタカナ表記になっているだけである。当面はこのみっつを併用していくことにしている。

翌日は、北海道開拓の村へ行く。明治初期から昭和初期までの北海道各地の歴史的建造物を移築復元し再現した野外博物館である。文化の流れを示す建造物を保存し後世に永く伝えることを目的に1983年に開村された野外博物館である。

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posted by 今田欣一 at 20:27| 札幌の虹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする